2023年8月7日(月)

 九日前に指輪を買った。職場で身につけられるように、控えめなものにした。ところが実際に指輪をしながら仕事をしてみると、どこか落ちつかない。ふだんは意識したことのなかった指の存在が大きく感じられるからかもしれない。働き始めて二年目で、なおかつ結婚もしていないのに指輪をしていることに対して他者からどう思われるかが不安なのかもしれない。そういう自意識はとうに捨てたと思っていた。それに、じぶんは生涯結婚するつもりがないので、だからこそ指輪を嵌めていたいのだという当初のもくろみを思い出した。暫くは様子を見る。

 

 当直業務の日だったので、職場で電話番をしながら本を読んで夜を過ごす。この日のために家から持ってきた本はヴァージニア・ウルフ『船出(下)』、笹井宏之『ひとさらい』だった。笹井宏之の「えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力を下さい」はじぶんにとって特別な一首で、呪文のように唱えながら大学までの道を歩いたこともあった(2021年5月7日(金)その2 - アサイラムの手引き書 (hatenablog.com))が、選集ではない第一歌集『ひとさらい』を読むのは初めてだった。療養しながらの作歌であったのに、世界に対する視線がなぜこんなにもやさしいのだろう。わたしの世界認識を短歌に移植するとしたら、エネルギー配分が赤黒く傾いてしまうだろう。

 

 深夜、こわい夢を見て中途覚醒する。若い患者が逮捕される夢。どうか正夢になりませんように。