2023年10月1日(日)
米林宏昌監督の『メアリと魔女の花』を観たのだけど、メアリの成長譚としても、異性間の恋愛または友情の物語としても、変身魔法の実験を世代を超えて防ぐ物語としても奥行きが足りなかった。メアリではなく、シャーロット大おばさん(=赤毛の魔女)の過去をふくらませて描く方がおもしろそうだ。
それに比べて、きのう観た細田守監督の『おおかみこどもの雨と雪』はよかった。上映が2012年で、わたしが以前観たのはTV放送でだから、おそらく10年近く経過しての再鑑賞。台詞がなく映像と音楽だけで物語が進行するシークエンスの美しさ! 終盤、雪と草平の会話はカムアウトのやり取りとして読むことも可能。
魂は自身の社会を選ぶと
後は堅く扉をしめる
もはやその神聖な仲間に
だれも押し加わってはならない
魂の貧しい門前に
立派な馬車が止まってももう心を惹かれることはない
靴ふきの上にたとえ皇帝がひざまずいても
魂はもう心を動かすことはない
私は知っている
魂が宏大な国からただ一人を選びとるのを――
それから後は 石のように
注意の栓をぴたりと閉ざしてしまうのを――
(エミリ・ディキンスン『自然と愛と孤独と』中島完 国文社 1964.8)
ちょうど読んでいた詩集より、いっとう好きな詩を。雨くんを想起。