2021年5月21日(金)

 純粋。それはきわめて危険な人筋道、というよりもっときわどい綱渡りのようなものです。道ならばまだしもひろがりがあり、道草もゆるされます。おなじ野面をあるいてゆく人びととことばを交しあい、それによってなぐさめられ、ゆたかな明日への糧とすることもできれば、逆に直情径行の空しさを思い知らされ、途中から道を外れたり、すすんで傍道にまぎれこんでゆくことだってありえます。

 綱渡りにはそれがありません。右も左もないかわりに、あるのは奈落です。踏み外せば落ちるのです。落ちれば死ぬのです。およそゆとりというもののみとめられないこの世界では、ためらいさえもそのまま死に通じます。

矢川澄子『兎とよばれた女』ちくま文庫 2008.5)

 200ページにも満たないこの小説を2度ほど挫折している。今回こそは読み終えられそうだという根拠のない自信がある。

 このところ、政治家の発言に傷ついたり、観ているドラマで推しが死んだり、面談で教授に褒められたり、気分が乱高下して落ち着かない。まあ差別主義者の発言に傷つく必要はまったくないのだと今なら思えるけれど、でも。To doリストを端から塗りつぶしたら即座に退場したいね。

 

 【追記】「傷ついた」と書いてみたものの、これは嘘かもしれない。それよりは「呆れた」の方が近いかもしれないが、自分の心情を正確に把握できていないのでよくわからない。