2021年5月4日(火)

 オーストリアつながりになるが、リルケの『若き詩人への手紙・若き女性への手紙』を読み終えた。手記も詩集も読みさしなのだけど、リルケを読みたいひとに対して訳者がまず勧めるのはこの本らしく、結果的には良かったのかもしれない。

  あなたは御自分の詩がいいかどうかをお尋ねになる。あなたは私にお尋ねになる。前にはほかの人にお尋ねになった。あなたは雑誌に詩をお送りになる。ほかの詩と比べてごらんになる、そしてどこかの編集部があなたの御試作を返してきたからといって、自信をぐらつかせられる。では(私に忠言をお許し下さったわけですから)私がお願いしましょう、そんなことは一切おやめなさい。あなたは外へ眼を向けていらっしゃる、だが何よりも今、あなたのなさってはいけないことがそれなのです。誰もあなたに助言したり手助けしたりすることはできません、誰も。ただ一つの手段があるきりです。自らの内へおはいりなさい。あなたが書かずにいられない根拠を深くさぐって下さい。それがあなたの心の最も深い所に根を張っているかどうかをしらべてごらんなさい。もしもあなたが書くことを止められたら、死ななければならないかどうか、自分自身に告白して下さい。何よりもまず、あなたの夜の最もしずかな時刻に、自分自身に尋ねてごらんなさい。私は書かなければならないかと。深い答えを求めて自己の内へ内へと掘り下げてごらんなさい。

リルケ「若き詩人への手紙」高安国世 新潮文庫 S28.1)

 引用しようと思ったらキリがないし、手が疲れたのでこれだけ……。どの文章も気高い光を帯びていて、内へ内へ沈潜すること、孤独を愛することを説いている。この頑迷さ、生真面目さはドイツ語圏文学に共通したものなのだろうか。肌に合う、と感じる。暫くは枕元に置いて繰り返し読もう。訳者後記に書いてあること(女性の徳についての箇所)はいまいち納得しかねるので、他の著書も読みつつ考える。