2021年4月18日(日)
『女性俳句の世界』(上野ちさ子/岩波新書)を読み終えた。といっても、こちらは元から関心のあった俳人のみに焦点を当てた。
杉田久女
われにつきゐしサタン離れぬ曼珠沙華
高浜虚子のことを敬い続けていたが、40代の頃に説明もなく同人雑誌『ホトトギス』から除籍される。暫くは句作を続けるものの、やがて俳句から離れ、句集を1冊でも残したいという悲願を叶えることもできず病死。なぜ高浜虚子は彼女のことを除籍したのだろう……。
橋本多佳子
月光にいのち死にゆくひとと寝る
いなびかり北よりすれば北を見る
月一輪凍湖一輪光り合ふ
蜂の巣をもやす殺生亦たのし
いなびかり~の句を初めて読んだとき、しなやかな強さを感じた。雷鳴に怯えるでも隠れるでもなく、ただその方角を見遣る。きっと眉一つ動かさない。そして間を置かず、直前までしていた行為に戻る。稲光のことはもう気にならない、などという(凡庸な)映像が浮かぶ。当の本人は西東三鬼に激賞されても戸惑うばかりだったという。
三橋鷹女
子を恋へり夏夜獣の如く醒め
萍のわが屍を蔽ふべく
向日葵を斬つて捨つるに刃物磨ぐ
薄氷へわが影ゆきて溺死せり
県立図書館の書庫に全集があるらしいので舌打ちせずに済んだ。帰省する際に借りる。高柳重信や富澤赤黄男などの男性俳人も気になる。