2021年4月9日(金)

 なんとなくホールデンに会いたくなったので『ライ麦畑でつかまえて』を棚から抜き取り、付箋が貼ってあるページを中心に拾い読みする。「再読」ということばを使うと、初めから終わりまできっちり読み返すべきだという強迫観念(自己暗示)に囚われてしまう。しかし、この「拾い読み」ということばは気が楽だ。過去の自分が落としたパンくずをついばみ満足した。

 午後から授業。3限は対面、4限はオンラインだけれど帰宅する時間がなく大学図書館で受ける。どちらもつまらない。独学する方がわたしには合っているのだ昔から。座り続けて疲れたので、パソコンのカメラがOFFなのを良いことに館内を散歩する。文学部があるわけでもないのに全集やマイナーな作家などが配架されていて、へんな図書館だなとつくづく思う。ゼーバルトベケット、だれが読むの。わたしもまだ読んでない。

 席に戻りパソコンの画面を見ると、130人ほどいた授業参加者が減って、残っているのは20人だけだった。よくわからないが、これは集団ストライキだろうか。そうとしか考えられない。なぜだれも決行日を教えてくれないのだろう。教えてもらえていたら勇んで協力しただろうに。裏切り者のわたしは皆に明日から後ろ指をさされるのかしら、と不安になる。ふたたび画面を見ると、教授も姿を消していた。